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再び歩く

ここ数年、智子は、家の中では、ひざ立ちや這ったりして移動し、外に出るときは、すべて車椅子を使っていますが、以前は、車椅子を使わずに、歩いていました。急性脳症後、半年ほどして数歩歩き始め、その後は、少しずつ歩く距離が伸び、弱い足取りながらも、介助されながら、30分くらいは歩くことができたのでした。6年ほど前に、その当時に起こっていたけいれんに、倒れるけいれんが加わったのですが、智子の様子を見ていると、どうも倒れることへの恐怖心から、立つことや歩くことができなくなっていったようでした。

       

けいれんの薬で、倒れるけいれんを抑える治療をしていただく一方で、ウォーカーを使って散歩したりしていましたが、倒れるけいれんは無くならず、智子の恐怖心は、増す一方だったようです。立せたり歩かせたりすると、仕方なくされるに任せているようでしたが、智子は、まもなく、決まって、自分で片足を上げ、バランスを崩して転ぶのです。そのとき、智子の体は、けいれんが起きたときのように固くなり、小刻みに震え、目は、凝視の状況になっていました。(当時は、この状況を、「倒れるけいれん」として、記録していました。)こんなふうに一旦転ぶと、その後の1・2分は、ウォーカーも介助も要らないようなシャキシャキした足取りで、歩くのです。現在でも、トイレに行くのに立たせたりすると、同様のことが起きますが、いつもは、介助者に全面的に寄りかかり、しょうがなく足を出している様子ですから、このけいれんが起きた後の、智子の変わり様は、本当に目を疑うほどです。このけいれんについては、現在抗けいれん剤をいただいている病院の先生からは、「にせけいれんかもしれない。」と伺っています。(けいれんの記録には、現在も「倒れるけいれん」として、記録を続けています。)智子は、本来用心深く、2才の頃、ブランコから落ちて、ケガもしなかったのに、3ヶ月ほどは、ブランコに寄りつかなかったほどです。ですから、智子が自ら起こしているように感じるこの倒れるけいれん(にせけいれん)は、「立つのが怖いよ。歩きたくないよ。」という、せめてもの意思表示なのかもしれませんが、家族にしてみれば、なんともイライラした苦い思いに駆られるのです。「これさえ起きなければ、歩けるかもしれないのに。」・・・と。


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そんな智子の倒れるけいれんは、抗けいれん剤の薬の種類や量を変えても減少せず、ウォーカーを使っても、散歩中倒れることが多くなり、外を歩く距離が短くなり、ついに、智子の外出は、すべて車椅子になってしまいました。当時は、父親の転勤でアメリカにいましたが、担当の病院の先生が、「VNSセラピー(迷走神経刺激療法)の手術をすれば、もしかしたら、再び歩けるようになるかもしれない。」とおっしゃったのです。VNSセラピーは、本来けいれんの発生を減少させようとするもので、抗けいれん剤を減らすことができるということでした。そのお話しを伺って間もなく、我が家は、転勤により、日本への帰国が決まりました。ところが、智子が当時飲んでいた、アメリカの抗けいれん剤が、日本には一つもありませんでしたので、帰国後、日本で使われている抗けいれん剤に移行することも必要でした。担当の先生が、日本でVNSセラピーの手術をされている日本の先生(日本では、3人しかおられませんでした)に、連絡を取ってくださり、あとのお世話をしていただけるということでしたし、抗けいれん剤の状況もあって、智子に、VNSセラピーの手術を受けさせることにしました。


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昨年10月頃より現在まで、智子は、3種類の抗けいれん剤 (デパケンR、エクゼグラン、ガバペン)をのんでいます。けいれんの頻度も、アメリカにいる頃と、ほぼ同様です。そんな中、智子が、帰国後2年経った頃(今年の春)、寝起きのときに、一度、一人でスタスタ歩きました。30秒ほどだったのですがが、歩いたのです。寝ぼけて怖さを忘れているように見えました。私たちは、目が覚めていないので、偶然だと笑いました。ところが、8月にも、寝起きのときに歩いたのです。また、ソファで寝そべって遊んでいるときにも、何を思ったか、急に立ち上がり、うれしそうに歩いたのです。その時には、私たちは、もうびっくりしました。以来、2・3回、寝起きでないときも、歩き出しました。偶然ではなかったのです!歩き出した時、ほめると、智子は、とても得意そうな顔をして歩きます。私たちは、ヒヤヒヤして手をさしだすのですが、ちょっと手を貸すと、部屋の中を、数分間、行ったり来たりもしました。「この調子で、靴を履いて、再び、外で歩けるようになって欲しいな・・・。」と、家族で願っているところです。


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コメント

ご両親のご苦労は察して余りあるものがあります。いろんなことを乗り越えていかれる姿には頭が下がります。「歩く」ということは、大変に素晴らしい一歩だと思います。ぜひ頑張り続けて、いつか普段通りに歩ける日が来ますように、心より祈願しております。

投稿: 原田和彦 | 2007年10月31日 (水) 13時32分

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